望月明日太2/24在廊 江口智己2/28.29在廊
次世代のうつわ展期待度100%の若き陶芸家ふたり 
2004年2月24日〜3月6日 期間中3月1日のみお休みです。
望月明日太出展作品を見る
   江口智己出展作品を見る(準備中)

  ちーさい春みつけた!陶芸の春もまぢか
季節が変わろうとするときには、ふと優しいサインをみつけて
小躍りしたい気分になることがある。
秋きぬと目にはさやかに見えねども
        風の音にぞおどろかれぬる

もちろんこの歌は秋風で、少々悲しげだが、春の到来を告げるサインは、目や耳や肌にもっとはっきりと飛び込んでくるものが多い。
秋は背後から忍び寄り、春は正面からやってくるわけだ。要は、心をからっぽにして、サインが飛び込みやすくすることだろう。

望月明日太 作


江口智己 作
たとえば 
木々の芽の膨らみ 
 鳥の声  
せせらぎの音色
雲の形や空の色  
そして風の色も?・・・

まだみんな気づいていない、そんなサインを見つけると、人に教えてあげたいような、自分だけの秘密にしときたいような、初恋のような気分

 そんな体験は陶芸的環境でもある。みんながまだまだ注目していない陶芸家の、きっと大きく育つだろう、小さいけどしっかりとした芽を見つけると、うれしくなる。こんな言い方をしたら、実績も人気もあるお二人 望月さんにも、江口さんにもたいへん失礼ではあるが、一層
どでかい樹
になる期待の現われとして、こんな表現を許していただきたい。
 
 長い長い冬から、いまようやく、陶芸界も春をむかえようとしている気がしてる。そんな気分にさせてくれた二人の若い陶芸家。それが望月明日太さんと江口智己さんだ。

 なんか従来の陶芸家とちがう。渋いだけでなく、花があり夢もあるみたいな感じ(ああ陳腐な表現!)。これからの食卓や料理シーンを変えていきそうな雰囲気(ああこれも陳腐))。

触ると、ぬるい春の水
陶芸の春を肌身に感じる
そんなうつわたちなのだ。



望月明日太 作

望月明日太 作
さんは、多摩美卒業後、著名な陶芸家に師事したわけでなく、自分自身の研鑽によって、ここまで積み上げてきた方である。

陳腐な言い方をすれば、手垢がついていない新鮮さをとても感じる。陶芸はこうでなければいけないって枷がなく自由奔放。なのにとっても使いやすい。

すでに多くの展覧会を経験してるが、それぞれ展覧会のテーマをよく意識して、柔軟な姿勢で多くのファンを得ていると思う。

こんなに社会性のある陶芸家はめったにいない。大きな声では言えないが、陶芸家のほとんどは現代社会にうまく適合できないでいる。そいう意味でも、望月明日太は、ニュータイプの陶芸家なのだ。バランス感覚に長けた陶芸家と言える。

特に望月さんの作品で注目したいのは、機能美。ボディビルダーのような肉体ではなく、勝つために必然的に生まれたボクサーのような肉体。それも一流のコーチに教えられたのでなく、ストリートファイトで磨かれたみたいな・・・そんなうつわ。でもパンチは出しません。とても包容力のあるうつわで、優しく包み込んでくれます。

江口智己 作

江口智己 作
一方、さんは、窯元での修行時代が長く技術的に多彩。その上で表現にオリジナリティがあるので、作品に深みが感じられる。

古典文様なのに、今とても新しい感じがする絵付けは、陶芸のめぐりめぐる春を感じさせる。

窯元での修行が裏目に出る陶芸家もいるが、江口さんの場合はオモテに出てる。窯元での経験や技法を、隠そうとして無理やり個性的なものを作る人もいるが、作品からしっぽが見えてるみたいなことも多々ある。

そういう無理な姿勢が、江口さんには微塵もない。自然体なのだ。培ってきたものを自然に自己表現にとりいれてる。それな姿勢がやっぱり、ニュータイプの陶芸家だなあ なんて思ってしまうのだ。

こなれた色使いには、安心感がある。多くの色が手持ちにあるものの、好みの釉を研究して、的確に使ってるのだと思います。形作りにも、嫌味のない工夫がある。まさに陶工と陶芸家の間に身を置き、陶に取組む人である。

望月明日太 作

江口智己 作

 時代はデフレである。今、けっこううまい惣菜が、自宅で料理するより安い値段で、お惣菜屋さんで買えたりする。そういう時代だから食のあり方もずいぶんと変化してる。食器もあまり高価なものは、そうそう使えない。でもイイものは使いたい。それほど高くなくて、ずいぶんとイイもの。しかも量産品でない個性的なもの。

そんな時代のニーズに合わせなくては陶芸家は生きていけない?でも彼らは、時代のニーズに無理して合わせようとしてるのじゃない。彼らはいっこうに自然体。わたしなんかより、ずっと
“うつわ”
でかい
ような気がする。

時代を追わない。
時代を卑下しない。
その時代こそが、
彼らの舞台なのだから・・・
ああ、陶芸家この劇的なるもの!
次世代を担う
若き陶芸家たちに幸あれ!
いや、幸あろう かならず

うつわのみせDEN
 店長代理 田口巌
   2004年2月

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